説明を増やすほど、伝わらなくなることがある
「ちゃんと説明したのに、なぜ伝わらないのだろう」。そう感じたとき、私たちは説明を足しがちです。しかし、情報を増やしても伝わらないことがあります。原因が説明不足ではなく、話し手と聞き手の「前提の違い」にあるからです。
同じ言葉を使っていても、頭の中にある状況、経験、目的、不安は同じではありません。だから、伝える前に必要なのは、説明を増やすことではなく、相手がどの前提から話を聞いているのかを読むことです。
まず、事実と自分の解釈を分ける
例えば、提案をしたあとに相手の反応が薄かったとします。「理解していない」「やる気がない」と決めつけたくなるかもしれません。しかし、それは解釈です。確認できる事実は、「質問が出なかった」「返事が短かった」といったところまでです。
ここで事実へ戻ると、問いが変わります。「なぜ分かってくれないのか」ではなく、「相手には、何が見えていないのだろう」と考えられるようになります。この切り替えが、社会人先生の国語ルートでいう「読む」の入口です。
相手の前提へ入ってみる
次に、相手の立場から同じ場面を見直します。相手は何を知っているのか。何を知らないのか。何を心配しているのか。何を決めようとしているのか。表面的な言葉だけではなく、その人の判断を支えている前提まで読みにいきます。
社会人先生では、これを「相手にナリキル」と表現します。相手の意見へ無条件に賛成することではありません。自分の見方だけで相手を説明せず、「この人には世界がどう見えているのだろう」と視座を移してみる実践です。
説明は、相手の前提から組み直す
相手の前提が見えたら、同じ説明を繰り返す必要はありません。必要なのは、相手の現在地から届く言葉へ書き換えることです。
専門知識が足りないなら、用語を減らす。判断材料が足りないなら、比較を示す。不安が大きいなら、メリットより先にリスクへの対応を伝える。目的が違うなら、そもそも何を決める話なのかを合わせる。伝え方は、相手の前提によって変わります。
説明を増やす前に、三つだけ確認する
伝わらないと感じたら、すぐ説明を足す前に三つ確認します。「相手は何を知っているか」「相手は何を気にしているか」「相手は何を決めようとしているか」です。
この三つが見えるだけで、話はかなり変わります。伝える力は、話す量だけでは決まりません。相手の現実を読み、その人に届く形へ書き換える力によって変わります。
今日の一手
次に「伝わっていない」と感じた瞬間、説明を追加する前に一度だけ止まってください。そして、「いま、相手はどんな前提からこの話を聞いているだろう」と問い直します。伝わらないこと自体を、相手を深く読むための材料へ変えるところから始めます。

