説明を増やしているのに伝わらない。この迷いは、答えが足りないから起きているとは限りません。判断の入口に置いた物差しから見直します。判断の構造を見るため、こんな仮想場面を置きます。打ち合わせで『この資料を分かりやすく直してください』と頼み、翌日返ってきた資料が自分の想定とまったく違ったとします。そこで『もっと詳しく言えばよかった』と説明量を増やしたくなります。
先に一手だけ言うと、『この場が終わるとき、何が一つ明確になっていればよいか』を先に置く。
いまの物差しを言葉にする
説明不足は確かに原因の一つです。ただ、『分かりやすく』の意味を双方が同じだと思い込んでいれば、言葉を増やしてもズレの中心は残ります。相手は文字量を減らすこと、自分は結論を先に出すことを考えていたかもしれません。 ここで一度、『実際に起きたこと』と『そこへ自分が足した意味』を分けます。答えを増やす前に、判断がどの前提から始まっているかを見るためです。
現実を変えずに読み方を変える
社会人先生でいう『場にナリキル』は、空気に合わせて自分を消すことではありません。その場が何のためにあり、誰と誰の関係が動き、いま何を決める必要があるのかを読みます。 『自分がどう見られるか』だけを主語にすると、発言する/黙るの二択になりやすくなります。場全体を主語にすると、質問する、確認する、いったん保留する、別案を置くなど、中間の行動が増えます。 理論を覚えることが目的ではありません。さきほどの具体場面へ戻ったとき、以前とは違う情報が一つ見え、そこから選べる行動が一つ増えることが重要です。
社会人先生の全体像では、未来人・相手・場へナリキルことで視座を育て、そこで見えた一手を具体へ下ろし、現実の反応を観測してまた修正します。未来を思い込むのではなく、未来が起こり得る条件を現在に増やす、という位置づけです。
この方法が外れるとき
でも、毎回相手の前提を丁寧に聞いていたら仕事が遅くなる、という問題もあります。だから長い面談は要りません。ズレやすい言葉だけを一つ確認します。 ただし、場の目的を優先することと、多数派へ従うことは別です。むしろ目的に照らして必要なら、違う意見を出すことが場への貢献になる場合もあります。 それでも使えるのは、結論を決める技術としてではなく、自分が見落としている材料を短時間で増やす技術としてです。
一度で正しい読み方へ到達する必要はありません。仮説として一つの見方を置き、動いた結果を観測し、違えば直す。その往復が思い込みと実践を分けます。
戻せる一手から動く
依頼するとき、『完成したら、読む人が何をできる状態にしたいですか』を一問置きます。返ってきた成果物が違ったときも、訂正事項を並べる前に、相手が置いていたゴールを聞きます。 最後に結果を一つだけ観測します。迷う時間が減ったのか、相手とのズレが減ったのか、次の一手が具体になったのか。気分の良さだけではなく、実際に選択肢が増えたか、確認する相手や情報が明確になったかを見ます。結果が変わらなければ、同じ方法を気合いで繰り返さず、最初に置いた問いを一段戻します。成功か失敗かの二択にせず、何が少し進み、どこでまだ止まったかを分けます。
次に似た場面へ出会ったとき、すぐ正解を出せる必要はありません。『『この場が終わるとき、何が一つ明確になっていればよいか』を先に置く』という見方を置き、その後の現実がどう動いたかを見て、採用するか決めれば十分です。
社会人先生の全体像を読む
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