問題は、考えていないことではありません。考えるほど、最初の判断基準が見えなくなることがあります。仮に、こんな場面です。午前9時。画面には『11時までに上司へ資料修正』『12時までに顧客へ返信』『15時の会議資料を準備』の三つが並んでいるとします。どれも遅らせたくない。そこで三つを行ったり来たりすると、20分たっても何一つ終わっていません。
ここで増やしたいのは答えではなく、選べる問いです。
判断の入口を組み替える
判断が詰まったときは、答えの不足より先に、自分が何を当然だと思っているかを見ると整理しやすくなります。前提は事実ではありません。事実から結論へ進む途中に置いた、自分なりの読み方です。 前提を言葉にすると、事実と解釈の境目が見えます。境目が見えると、同じ出来事から別の問いを立てられます。答えを無理に変えるのではなく、答えが生まれた場所を一段手前から読み直す方法です。 理論を覚えることが目的ではありません。さきほどの具体場面へ戻ったとき、以前とは違う情報が一つ見え、そこから選べる行動が一つ増えることが重要です。
この読み方は、社会人先生の国語ルートでいう『現実を読む』仕事とつながります。ただし、ブランド用語を覚える必要はありません。使えるかどうかは、次の現実で判断が一つ増えるかで確かめます。
最初に変えるべきは何か
この場面で起きやすいのは、『一番急いで見えるものから触る』『簡単に終わるものから消す』という判断です。もちろん、それが正しい日もあります。ただ、急ぎや簡単さだけでは、今日の仕事全体をどこへ進めるかは決まりません。 ここで一度、『実際に起きたこと』と『そこへ自分が足した意味』を分けます。答えを増やす前に、判断がどの前提から始まっているかを見るためです。
視点を増やす目的は、迷いを長引かせることではありません。見えていなかった条件を一つ増やし、そのぶん次の行動を小さく具体にします。
反対側からも見ておく
でも、現実には締切がある以上、悠長に視点を変えている時間はない、と感じるかもしれません。その疑いはもっともです。だから考える時間を増やすのではなく、三つの仕事を同じ物差しへ一度だけ載せます。 ただし、前提を疑えば必ず別の答えが正しい、という意味ではありません。最初の判断が妥当なこともあります。目的は反対意見を作ることではなく、確認できる材料を増やすことです。 それでも使えるのは、結論を決める技術としてではなく、自分が見落としている材料を短時間で増やす技術としてです。
行動まで下ろして初めて終わる
三つそれぞれについて『遅れると誰が止まるか』『終えると次に何が進むか』を一行だけ書きます。答えが出たら一つを選び、25分だけ他を閉じます。25分後に、仕事量ではなく全体の停滞が減ったかを見ます。 最後に結果を一つだけ観測します。迷う時間が減ったのか、相手とのズレが減ったのか、次の一手が具体になったのか。気分の良さだけではなく、実際に選択肢が増えたか、確認する相手や情報が明確になったかを見ます。結果が変わらなければ、同じ方法を気合いで繰り返さず、最初に置いた問いを一段戻します。成功か失敗かの二択にせず、何が少し進み、どこでまだ止まったかを分けます。
次に同じ迷いが来たとき、今回と同じ答えを選ぶ必要はありません。同じ読み方がまだ使えるかから確かめます。
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